VPT(歯髄温存療法)
大きな虫歯の治療について
⾍⻭が深く神経が露出してしまうと一般的には「神経を取る治療」を行います。
神経を取ると歯の寿命が短くなります。
ですが、もう一つ治療方法があります。
それは、神経の感染がある部分のみ取り除き、健康な神経を特殊なセメントで保護し「神経を残す治療法」があります。この治療は大変繊細かつ精密な治療で、設備と器具がそろっていないと難しい治療であり、行っている医院は多くありません。
当院では1本でも歯を長く残していただきたいので、VPT(歯髄温存療法)という治療を行っております。
神経を残し、歯を守ることの大切さ
VPTの治療を行って、数日経っても痛みが出なかった場合は神経を残すことができます。
神経を 残す |
神経を 取る |
|
---|---|---|
色 | ○ 天然歯の白さ |
× 変色 |
歯を 削る量 |
◎ 少ない |
× 多い |
来院回数 | ○ 2~3回 |
× 5~6回 (症状に よる) |
1歯に 対しての 総額 |
○ 安い |
× 高い |
歯が 割れる 可能性 |
◎ 低い |
× 高い =抜歯の 可能性が 高くなる |
神経を残すことは多くの利点があります。歯をどれだけ残せるかは治療の精密さによって大きく変わり、ご自身の歯の面積が小さくなればなるほど抜歯のリスクが高くなります。
歯の神経を残すと残さないとでは、
歯の寿命は大きく変わります。
VPT(歯髄温存療法)
神経を残すための
最後の治療方法
VPT(歯髄温存療法)とは、むし歯と感染している神経の一部を完全に取り除き、
露出した神経に対して保護するセメントをつめて神経を残す治療です。
神経を残すことは、歯の寿命を延ばすことにつながります。
VPTは「神経を残すための最後の治療方法」であり、成功率は90%以上との統計も出ております。
VPT終了後、ズキズキするような痛みが出なければ、詰め物やかぶせものをつけていきます。
虫歯の大きさによっては2~3週間の経過観察を行うこともあります。
万が一、ズキズキするような痛みが引かなければ「神経をとる治療」が必要となります。
VPT(歯髄温存療法)に使用する道具
マイクスコープ
ラバーダム防湿
超音波スケーラー
MTAセメント=神経保護剤
MTAセメントの特徴
①生体親和性が高い
細胞などの組織と接触しても異物反応を起こしにくい硬組織をつくる作用があります。
②優れた封鎖性
膨張しながら硬化するため緊密に空間を封鎖する
= 細菌が感染しにくい。
③殺菌作用
pH12.5の強アルカリ性
= 細菌を死滅させることができます。
歯の生命力が足りない場合
VPTを行っても歯の生命力が足りないと、細菌に負けてしまい予後が悪くなってしまう場合があります。
その際は、後から神経の治療が必要になる場合があります。
BIO-C シーラー(MTAセメント配合)
VPT後、痛みが出た場合は神経の治療を行います。その際はこちらのBIO-C シーラーという材料を使います。神経の治療で最後に詰めるお薬で、こちらもMTAセメントが高濃度に配合されております。
神経の治療が終わりましたら、土台とかぶせ物をつけていきます。
神経の治療の成功率
被せ物の種類によって、成功率が大きく変わります。
神経を守ることは、歯を残すこと、ひいては健康寿命を延ばすことにつながります。
一つ一つの治療の積み重ねが、将来を大きく左右しかねませんので慎重に治療方法をご検討してください。
被せ物の違いで
成功率に約50%もの差が出る
神経の 治療の 精度 |
被せ物 の精度 |
神経の 治療の 成功率 |
|
---|---|---|---|
Case 1 |
○ 高い 精密度 |
○ 自費 (精密)の 被せ物 |
91.4% |
Case 2 |
△ 中度の 精密度 |
○ 自費の 被せ物 |
67.6% |
Case 3 |
○ 高い 精密度 |
× 保険の 被せ物 |
44.1% |
Case 4 |
× 低い 精密度 |
× 保険の 被せ物 |
18.1% |
引用元:HA Ray,1995,Inter Endod J